繊細な味わいと主人の心配りに心がほどける日本料理店
東京・渋谷 日本料理 タケモト
日本人の味覚は寒暖の移り変わりに敏感だ。夏には薄味を、冬には濃味を求めるという私たちの味覚の欲求は、日本料理の“季節感”に影響を与える要素のひとつ。そして料理人は、その欲求に応えるために、日々、心を配る。この店で2月の献立を飾る「塩鰤の粕汁」は、そんな日本料理における主人の気遣いを、しみじみと味わえるお椀。汁のおいしさといったらこのうえない。塩鰤からひいた凝縮感のあるアラ出汁に、吟醸香たっぷりの酒粕を溶き、隠し味程度の白味噌で厚みを与える。椀種には、塩鰤を焼いたものをどんと入れて。その下にはねっとりなめらかな海老芋、まわりには大根、ニンジン、青菜に溶き芥子。
適度な塩味(えんみ)や吟醸香の計算された仕立てが、まだまだ寒い梅見月の胃をじんわりと温めてくれる。鰤の産地は時期によるが、基本的には富山県氷見の日本海のものや、北海道産などの天然鰤を扱う。ご主人の武本賢太郎さんは、金田中本店を経て、向島の料亭で料理長を務めた人。日本料理の華ともいえる「椀盛」にも、筋の通った旨さがある。
Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Noriko Yokota
基本情報
記事更新/ 2013.1.18
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