素材のうまみを丁寧に引き出す割烹料理の技と味
京都・祇園北 割烹 千ひろ
四条通を東へ進んで八坂神社に突き当たる前、両肩を塀に挟まれながら細路地を進むと店の行灯が見えてくる。水を打った石畳。上等な手触りの暖簾。引き戸を開けると広がる白木の空間。場所や雰囲気、料理のすべてに一流の京都らしさを堪能できるのが、「割烹 千ひろ」だ。豆腐は必ずといっていいほど献立を飾るが、写真の「季節の果物の豆腐和え」はそのなかでも特にこの店らしいひと品。なめらかに裏ごししたおぼろ豆腐10の割合に対し、やはりなめらかにこした湯葉のペーストを1の割合で合わせ、親子衣にする。味付けは少々の塩と薄口醤油のみ。この衣をソースのごとく、厚く、もったりと季節の食材にのせるのだが、その食材はフルーツであることがほとんどなのだ。
バナナ、キウイ、メロンにぶどう――熟成させて、“かもした味”が出てきた食べ頃の味わいを、一等の器に寄せる。大豆独特の香りと甘さが、フルーツの糖分や水分と絡み合っていっそう味わい深い。いろいろと手を加えるのではなく、素材の特徴を極力そのままに生かし、和合に主眼を置いた品。秋が深まれば、焼き柿の豆腐和えなども登場する。
Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Noriko Yokota
基本情報
記事更新/ 2012.8.20
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