若き店主・大屋友和さんは、浪速割烹「喜川（きがわ）」で11年修業を経て、2011年に「翠」をオープンさせた。「若い世代の人たちにも気軽に日本料理を楽しんでいただきたいので」とコースの価格を控えめに設定。21時以降は和え物や煮物、酒肴など単品メニューにも対応、カツ丼や自家製プティサレ（豚の塩漬け）を使ったカレーといった変化球も用意する。肉は必ず塊で焼き、休ませてから切り分けるなど洋食に通じる巧みな手法は修業時代に学んだ賜物だ。ほどよい塩加減とパリッと小気味よい歯触りが楽しい「甘鯛のうろこ焼き」は、愛媛の絹皮ナスや枝豆、赤ピーマンなど夏野菜の彩りも鮮やかで、食欲をそそる。

島根の藻塩や山葵、愛媛や兵庫・川西の野菜など、使う食材には、自ら生産者を訪ねて素材を吟味するなど、素材選びにも力を注ぐ。フレンチなど同世代のシェフとの交流にヒントを得ることも多く、今後はビュルゴー鴨など肉の種類も増やしていきたいと目を輝かせる大屋さん。進化し続けるその味わいの探求に、訪れるたびに新たな発見があり、期待はふくらむ一方だ。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada