2008年にオープンした店は、駆け込み天井や中塗り切り返し仕上げの土壁など数寄屋の佇まいを取り入れた粋な空間。ブビンガの一枚板を生かしたカウンターに立つ店主・柚野克幸さんは浪速割烹の名店「喜川（きがわ）」で経験を積んだあと、浪速伝統野菜をメインにすえた店の料理長を経て独立。「懐石のルールや難しいことにこだわらず、今いちばんおいしい素材を楽しんでいただきたい」とおまかせのスタイルを選んだ。コース内容は月替わりだが、自身の琴線に触れるものに出合えば、季節にこだわらず出すことも。道南産真昆布と大阪・箕面の天然水でひく出汁の包み込むようなまろやかさに陶然とするお椀など、丁寧な仕事の積み重ねをしみじみ実感できる。

また一方で、低温調理により絶妙な食感と味わいを引き出した牛肉にカレー風味でピリッと辛みと香味が利いたゴボウのチャツネを添えるなど、緩急自在のアレンジも楽しい。淡路、明石など近郊の魚や力強い旬野菜などを生かしたシンプルかつ遊び心のある素材づかいにもご注目を。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada