大阪の料亭「味吉兆」出身の髙畑均さんが2000年にオープンした「太庵」。「開店当初は懐石スタイルで焼物もおまかせで出していましたが、骨が苦手な方、骨付きの肉や鯛のカマが食べたいとおっしゃる方などお好みがさまざまでしたので」と今では、コースの焼物をプリフィックススタイルに転向した。季節の魚、ビゴール豚、和牛、地鶏などメインは、毎日最低6種類が用意され、カウンター右隅の炭床で豪快に焼き上げる様子が見られるのも楽しい。炭火焼きは大皿に人数分を盛り付けて出すことも多いのでシェアしていただくこともできる。「新たな発想のヒントはいたるところにある」と話す髙畑さん。細かく刻んだ大徳寺納豆を塗ったトキシラズ（大目マス）はほどよく乗った脂とクセのある豆の個性が互いに引き立て合う。

赤ワインで蒸してから炭火で焼いたスペアリブは深い香りが広がり、とろけるように柔らかい。フランス産の肉類やキノコ、ホワイトアスパラなども使うが、料理のベースはあくまでも日本料理。和の技法にこだわりをもって”おいしいもの”を吟味しているという。端正な和の流れと斬新な試みのギャップがなんとも愉快。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada