日本橋一の老舗がもつ変わらぬ味と心
東京・日本橋 てん茂(てんも)
明治18年、初代、奥田茂三郎が日本橋に天ぷらの屋台を出したことが「てん茂」のはじまり。江戸通りの拡張を機に現在の地へ店舗を構えた。往時の名工による建築は、天井がなくむき出しの梁が風情をかもす。当時の法律で、入り口に設置された手洗いにも歴史の深さをかいま見る。揚げ油が染みたヒノキのカウンターも年代ものだが新品同様のすがすがしさ。そんな老舗で味わう昔ながらの天ぷらは、ビタミンEが豊富で酸化しにくい、炒った胡麻の油を使用。タネを油に落とすときのジュッと響く音、香ばしい胡麻の香りがあたりに立ち込め、なんとも情緒深い。
気候により出汁も替え、囲炉裏に火をくべ、夏の肉厚の房州産「アワビ」に秋の「栗の渋皮揚げ」など季節ごとのタネもまた楽しい。店とお客で作りあげた愛が込もる数々の軌跡は胃と心をも温めてくれる。変わるものがあるから、変わらぬものが際立つ。帰りぎわ、3代目の筆による「そもさん」の禅語。「いかがでしたか?」の問いになんと答えようか。
Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Sayuri Hiratsuka
基本情報
記事更新/ 2011.9.20
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