日本橋の路地裏に「すず航」はひっそりとたたずむ。すっきりとした外観に真っ白な暖簾が清々しく印象深い。店主の鈴木晴也さんは50歳を機に確かな志とともに独立を決意。開店から６年、日本料理出身ならではの風味豊かな出汁、カラッとした揚がり具合を考慮した黄身多めの衣や塩など、随所に繊細な工夫を見つけることができる。「シンプルなほど難しい天ぷらに向き合う姿をお客様に隠すことなく、毎日毎日いい緊張を与えていただいている。探求は無限で楽しい」そう語る鈴木さんの眼差しは少年のごとく純粋で真剣。妻でもある女将の人柄をそのまま映す朗らかなサービスも、訪れる者をほっとさせてくれる。

吟味し仕入れる江戸前のタネや新鮮な野菜がコースで供され、いくらでも飲めてしまう口当たりのよい日本酒など逸品が揃う。さつま芋の天ぷらとアイスクリームの組み合わせ「さつまいもアイス」740円も人気のメニュー。荷物を降ろしてゆっくりと楽しみたい、そんな店だ。

Photo/ Tetsuo Kitagawa
Text/ Sayuri Hiratsuka