歴史ある建物でいただく伝統のアンコウ鍋
東京・神田 いせ源
今も多くの老舗が残る神田。その一角にある「いせ源」の創業は、江戸時代の天保元年(1830年)だ。現在は、都内唯一のアンコウ鍋専門店として知られる「いせ源」だが、古くはさまざまな鍋物を出していた。好評だったアンコウ鍋に絞ったのは大正時代だという。「当店のアンコウ鍋が広く受け入れられたのは、当時は味噌仕立ての鍋が多いなか、神田っ子の口に合いやすい醤油味にしたことが大きな理由でしょう」と、7代目の立川博之さん。昆布とカツオの出汁をベースにした醤油味のツユから、ぬめりを丁寧に取るなど臭みを残さないアンコウの下処理方法、具材の組み合わせまで、レシピや料理法は当時からほとんど変わっていない。
鍋には、アンコウの身から皮、内臓までが使われており、ほっくりとした白身、コリッとした胃袋、ぷるぷるの皮など、部位によってさまざまな食感、味わいが楽しめる。アンコウのほかには、三ツ葉、シイタケ、ウド、絹サヤ、銀杏などを入れ、柚子で香り付けをしている。なかでも、たっぷりと入れられた三ツ葉の風味は、鍋全体の味を引き締めるアクセントだ。箸を進めるうち、ツユにはアンコウと野菜の旨みがたっぷりと溶け出していく。締めには、その滋味を余すところなく味わうことができるおじやが人気だ。鍋とともにいただきたいのが、「きも刺し」や「あん刺し」「唐揚げ」など、アンコウを使った一品料理だ。とくに、青森県風間浦でとれた新鮮なあんこうを使った「きも刺し」の濃厚な味わいは、ファンが多い。風情ある昭和5年(1930年)築の木造建築で、心ゆくまでアンコウ尽くしを楽しみたい。
Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa
基本情報
記事更新/ 2014.12.18
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