白壁に連子（れんじ）格子が映える町家を生かした店はお茶屋が並ぶ祇園らしい風景にしっくり溶け込む。靴を脱いで上がる店内は、プライベートな感覚のくつろぎの空間を大切にしつえられており、カウンター、個室ともに和の粋を凝らした造り。静かな座敷にたたずめば、ここがフレンチの店であることをふと忘れてしまいそうだ。京懐石風フレンチを中心とする料理もまた、和の風情をちりばめたもの。写真の前菜には、渡り蟹とワカメの梅肉ソースがけ、京都の合鴨ロース旨煮、剣先イカの造りに炊いた伏見唐辛子を添えたものなどが供される。「日本人の感覚に訴えかける『和』の要素をほどよく。野菜の下処理などには味が生きるので和のお出汁をよく使います」と料理長の福山伸宏さん。

付き出しから始まるコースでは椀物にスープ、お造りにカルパッチョ、食事中は自家製パン、締めにはご飯もしくは小ポーションのカレーが用意されるなど、和と洋が織り成す独自の世界が楽しめる。コースによっては鍋物や、塩釜焼きなど目の前で仕上げるライブ感あふれるひと品も登場。大切な人と過ごすひとときを思い出深いものにしてくれる。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada