30年以上もの間、上海料理を手がけてきた新山重治さんがオーナーシェフを務める「礼華」。2012年3月に開店8年を迎え、中華料理にフランス料理の手法を取り入れたヌーベルシノワのスタイルにも、ますます磨きがかかっている。コース料理主体で、盛り付けは一人前ずつが基本。人気のプリフィクス形式のコースは、なんと約70種類ものメニューから好きなものを組み合わせることができる。たとえば二人だけのディナーでも7～8品を味わうことができ、満足度が大きい。盛り付けはフレンチのごとく華麗で美しく、目にも楽しい。伝統的な上海料理をベースとしながら、フォアグラなど西洋ほか他国の食材も頻繁に使う。コースは1カ月から１カ月半で内容を替えるが、毎年、新作料理が加わってリピーターを飽きさせない。

たとえば酢豚といった定番料理も、薄切りの豚肉の中にライチを入れて巻くなどの創作を加えたり、海老チリソース煮では調味料の割合を変えるなど、常に新しい味を提供。その一方で、長年フカヒレ専門店でシェフを務めた新山さんのスペシャリテのひとつであるフカヒレの姿煮は、醤油や白湯（パイタンスープ）でじっくり煮込む上海風も提供するなど、自信作のクオリティーを常に保ちつづけている。フカヒレの姿煮には尾びれ、または背びれのものを、胸びれはスープに使うというこだわりは、長年の経験に培われた、美味を生み出す技ゆえである。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ HEARST FUJINGAHO