鎌倉駅より海手に徒歩約8分、潮風の香る閑静な住宅街に店を構えるイタリアンレストラン。オープンは2010年1月、オーナーでソムリエの飯田博之さんが、長年勤めた鎌倉のレストランから独立して開いた店だ。地元客から熱く支持される理由は、オーナー自らが手がける新鮮な鎌倉野菜と旬の海、山の幸を使ったストレートな料理。「イタリアでのソムリエ修業時代、家族経営の小さなワイナリーで働いていました。そこで毎日食べた、畑で作った野菜のみずみずしい味を今でも鮮明に覚えています」と飯田さん。そんな体験から、飯田さんも20年ほど前から、この地で野菜を作り始めた。イタリアから、ワインとともに毎年コツコツと野菜の種を買い付け。今では、畑の大きさも300坪を超え、収穫できる野菜やハーブも、約90種類に広がった。

「店のオープン時に、調理場では私がまだ野菜の土を落としていることなんてしょっちゅうです」と笑顔で語る飯田さん。毎朝、畑で土をいじり、その日に店で出す一番よい状態の野菜を吟味し収穫する。そんな素材を調理するのは、渡伊の経験をもつ、シェフの佐藤健一さん。「うちの店には、決まったメニューリストはありません。新鮮な野菜と、私が佐島の港や市場で買い付けた魚介や肉でメニューが決まります」と佐藤シェフ。店内の中央、壁一面に設けられた大きな黒板には、その日のメニューがびっしり。味の濃い主役級の野菜と旬の魚介、お肉――その即興から生まれるパワフルな味わいが、何ものにも替えがたいこの店の魅力だ。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ HEARST FUJINGAHO