細道の奥、ぽっと灯った路地行灯と表札のみを掲げた店は一見ふつうの民家のような佇まい。表の格子越しに洩れるやわらかな光がどこか懐かしく感じられる。中に入ると、おくどさんなど厨房のすべてがくまなく見渡せるカウンター。白い割烹着姿で迎える女将・石川智早代さんの姿が印象的だ。「女性が夜ひとりでも気負いなく来られるように。家のご飯のように気軽に食べられる料理を作っています」と石川さん。ご自身が幼い頃から食べて育った「お母さんのおかず」をベースにした定番のおばんざいはお酒のアテにも、白いご飯にもよく合う。お品書きには、和・洋・中のジャンルを問わないオリジナリティーあふれるメニューがずらり。レシピはなんと100種にも及ぶという。

素材はできる限り京都産を使い、歯ごたえのある京赤地鶏や観光のお客様に好評の「半兵衛麩」の生麩を使ったひと品も楽しみ。定番のポテトサラダに自家製の豚肉の燻製を使うなど、ひとひねりのきいたメニューに女将らしいセンスが光る。

Photo/ Satoshi Yasukouchi
Text/ Sawako Yamada