路地に面したビル1階。大きな看板を掲げていないため、店主の南條秀明さんは「常連さんでもたまに迷ってしまうらしいんです」と笑う。それでも2003年のオープン以来「大阪随一のビストロ」として不動の人気を誇り、今でもランチの予約を取るのが難しい。府内の数々の高級仏料理店で修業してきた南條シェフだが、自店を持つときにはカウンター・ビストロにしようと心に決めていたという。「熱いものを熱く出したかった。正直で明快、それが僕の色だから、うちは調理中の手元も丸見えの設計なんですよ」。そんなシェフが作るのは、ひと皿が1.5人前はあるビストロ直球料理。メインの鴨の炭火焼にしても、フォアグラのソテー、レンズ豆の煮込み、季節野菜のソテーがたっぷりと添えられてくる。

野菜は主に、奥様の出身地である熊本県山都町のもの。山都町は、全国に先がけて有機農法を成功させた地域として有名だ。フレンチの古典を知る技の厚みと、オリジナルへの自負、サービス精神が凝縮された料理は、多くを食べ慣れた大人の心にこそ、ジーンと響くはず。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Noriko Yokota