白と濃茶ですっきりと統一されたエントランスを抜けると、モダンなインテリアが広がる。青山のインド料理店「シターラ」は、足を踏み入れた瞬間から、インド料理との新しい出合いを予感させる。「当店のインド料理の特徴は、身体にやさしいこと」と話すのは、店長のタパ・カルヤンさん。インドの伝統的医学、アーユルヴェーダの根本にある医食同源の考えを大切にして作られる料理は、スパイスの辛さだけではない奥深さを感じさせる、やさしい味わい。ベジタリアンが多いインドで広く親しまれている「パラク・パニール」（写真上）は、ほうれん草のペーストを使ったカレーで、素材のシンプルさゆえ、シェフのスパイス使いの技量が光る。

インドの五つ星ホテルで活躍したシェフが腕を振るう「シターラ」。この「パラク・パニール」は、鮮やかなグリーンからもわかるように作り置きはせず、注文を受けてから作っている。ほうれん草、生クリームなどのこだわりの素材の滋味を引き立てるのは、インド産のフェヌグリークやクミンなどのスパイス。絶妙の配分が、濃厚かつまろやかな味わいを生み出している。さらに、このカレーのために店で手作りするカッテージチーズがコクを加え、最後まで飽きさせない。インドの伝統的な料理のほか、かきを使ったカレーやジビエの炭火焼きなど、日本ならではの食材を使ったシーズナルメニューを楽しみに訪れる人も多い。

Photo/ Kohei Nakamoto
Text/ Ryoko Nakagawa