2012年のオープン以来、宮廷料理を中心とした伝統的なオーストリア料理を味わえると評判を呼んでいる「銀座ハプスブルク・ファイルヒェン」。神田真吾シェフは、一生に一度しか挑戦できない難関資格「オーストリア国家公認キュッヘン(料理)マイスター」を持ち、メニューにはオーストリアを代表する料理が並ぶ。「素材を大切にするオーストリア料理は、軽やか。魚を使った料理も多く、年配の方にも好評です」と神田シェフ。なかでも、ウィーン名物「ウィーナーシュニッツェル（ウィーン風の仔牛のカツレツ）」は、ファンが多いひと皿。乳のみ仔牛のみを使うレシピは、神田シェフがウィーンで勤めた約150年の歴史を誇る「インペリアル・ホテル」流だ。カリッとした衣を噛むと、仔牛の旨みとバターの香りがふんわりと広がっていく。

ほかにも、オーストリア全土から選りすぐった前菜の盛り合わせや、ウィーンの伝統的なコンソメスープなど、オーストリアの食文化の継承者と認められた神田シェフならではの格式あるひと皿を楽しむことができる。また、日本では珍しいオーストリアワインにも注目したい。銀座という土地にいながら、オーストリアの歴史が育んだ美味を堪能し、小旅行するような気持ちで、特別な時間を過ごせる店だ。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa