日本料理「真砂茶寮」は、横浜・関内駅のほど近くに佇む数寄屋造りの一軒家。白木の杉を使った店内には、季節の花々がさりげなく飾られ、都会の喧騒から離れた、静謐な時間が流れる。腕を振るうのは、伊勢山皇大神宮で料理人としての修業経験をもつ、店主の入江延彦さんだ。懐石料理の献立は“旬替わり”で、入江さんは「季節をひと皿に凝縮しています」と話す。例えば、鮎を1匹丸ごと使った「鮎の流水椀」は、流水柄があしらわれた輪島塗の椀を使い、澄んだ出汁を清流に見立てたもの。一服の涼を感じさせる趣向となっている。

また、「真砂茶寮」で好評を博しているのが、神社で数々の祝いの席に立ち会ってきた入江さんの経験をいかした宴席料理だ。「鯛の姿幽庵焼き」など見た目もおめでたい料理が揃い、店外ののれんはお祝い用の「門幕」に。室内の書も入江さん直筆で用途に応じて掛け替える。大切な人と旬の口福を楽しみに、あるいは七五三や還暦など節目のお祝いに。美味に加え、随所に光る心遣いが、かけがえのない一席を、より特別なものにしてくれる。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa