【美食百花 特別プラン】八坂神社内で室町期から時を重ねた料亭で名物・田楽豆腐も味わえる、昼の特別懐石
京都・祇園 二軒茶屋 中村楼
室町期に八坂神社の門前の水茶屋として創業。神社南側の石鳥居をくぐり、南楼門までの参道に「二軒茶屋 中村楼」はあります。向かいにもう一軒茶屋があったことから「二軒茶屋」という屋号になったそうです。
店主の辻雅光(つじ まさみつ)さんに伺うと、「数えられる限りで私が12代目です」。江戸末期には料理茶屋として親しまれ、そして明治初期には、現在の形に近い料亭となり、さまざまな文人墨客や政(まつりごと)に携わる要人も多く訪れています。「話題の渋沢栄一さんもうちにお越しになったという記録が残っていると最近わかったところなんです」。
モダンな造りの鶴亀松(かくきしょう)の間には江戸期に長崎に居留していたオランダ商人から寄贈されたとされる、陶器の大皿が飾られています。店のそこかしこに長い歴史の一端が垣間見えるのです。
そんな由緒ある店の板場を取り仕切るのは、現在34歳という若き料理長の奈良昌紘(なら まさひろ)さんです。辻さんも「歴史だけでは成り立ちません。やる気のある若い職人に味を繋いでもらわないと」と全幅の信頼と期待を寄せます。今回は奈良さんの手による、夏の特別懐石をご用意しました。涼やかな先付は「鮑と雲丹・夏野菜の煮凝り」です。鮑と雲丹の他にかぼちゃ、小芋、ズッキーニなどの野菜をちりばめました。
例年は祇園祭で賑わう八坂界隈。この時期の京の風物詩といえば、鱧(はも)料理です。丸々と肥えて脂がのった最高級の鱧を厳選しています。こちらでは昨夏から、骨切りして葛粉を打ち、火を通し温かいままの鱧をお出ししています。葛のつるんとした食感。その膜にコーティングされるように、鱧自体のうま味や脂が封じ込められていて、何も付けずに食べても十分なおいしさ。鱧の吸物とも、水にさらした鱧梅肉ともまたひと味違う、押し寄せるようなうま味に目を見張ります。
もうひとつ、夏の献立に欠かせないのが、琵琶湖の鮎です。「二軒茶屋 中村楼」では、生け簀に泳がせ、お客様が来店してから取り出し、串を打ち炭火でパリッと香ばしく焼き上げます。撮影時はまだ小ぶりでしたが、今の時期には大きく成長した鮎をお一人様に一尾お出しします。
店の名物である田楽豆腐。その歴史は古く、茶屋で提供していたのが始まりと言われています。「二軒茶屋 中村楼」の田楽豆腐は十辺舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」にも登場する一品です。今も馴染みの豆腐店と味噌店から仕入れる木綿豆腐と白味噌を使い、甘辛くも風味豊かな味わいに仕上げます。今回はこの一品を懐石の中に特別に盛り込んでお召し上がりいただきます。
緑も鮮やかな、夏の八寸。ほおずきの中には鱧の子を煮凝りにした鱧子水晶や山桃の甲州煮が潜んでいます。新生姜の季節限定の味、才巻海老に新生姜の甘酢漬を巻いた爽やかな一品など、いずれも手を掛けた品々が盛り込まれています。もてなしの心に満ちた夏の特別懐石をお楽しみください。
Photo/Katsuo Takashima
Text/Ayako Miyoshi
〈美食百花 特別プラン〉
【期間】2021年8月1日(日)→9月30日(木)
除外日/水曜日(定休日)、8月12日(木)・17日(火)、8月30日(月) →9月3日(金)、9月16日(木)を予定(変更の場合あり)
【ご提供時間】11:30~14:00(最終入店)
【料金】お一人様8,800円 ※税・サービス料込
(コース内容)
・先付(鮑と雲丹・夏野菜の煮凝り)
・吸物
・造り(鱧葛打ち)
・焼き物(鮎炭火焼)
・八寸(鱧の箱寿司、山桃甲州煮、鱧子水晶、夏鴨ジュレ掛け、才巻海老新生姜巻、甘藷甘煮、ささげ胡麻和え)
・田楽豆腐
・炊き合せ
・止め椀
・ご飯
・香の物
・自家製菓子
・抹茶
※食材の入荷状況等により、メニューが変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
【ご予約・お問い合わせ】
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●受付人数/1~10名様
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掲載日/2021.7.19
※表示価格は税・サービス料込です。