二子玉川駅からほど近い場所にある、「鮨 逸喜優」。1991年から店を切り盛りする店主・荻原龍也さんがこだわるのは、天然ものであることと、江戸前の伝統と技だ。よい素材を手に入れるために、毎日、築地や川崎の市場へ足を運ぶ。新年会シーズンの厳寒期に旬を迎えるのは、たらの白子。大粒でプルッとした白子を、ポン酢と七味のシンプルな組み合わせが引き立てる。にぎりでは脂の乗ったぶりに冬の恵みを感じ、走りのさよりに春の兆しを知る。

一方、一年中外せない看板のにぎりが、あなごだ。身が崩れる直前を見計らって煮たふんわりとしたあなごを、塩、タレ、ふたつの味で楽しめる。「鮨 逸喜優」の江戸前寿司は、どれもやさしい味わいが特徴。酢飯には、白酢と赤酢を7対3の割合で使ってまろやかに仕上げ、寿司ネタを塩で締める際も最低限しか使わない。「魚介類は奥深く、楽しいもの。四季を味わっていただけたら」と荻原さん。確かな江戸前の技術と、寿司への情熱をもつ店主の明るい人柄。心まで満たしてくれる美食を求め、新年を祝う会食や集まりに足を運びたい店だ。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa