京都・祇園、八坂神社の鳥居内に店を構える「二軒茶屋 中村楼」は、門前の水茶屋として室町期に創業。後に豆腐料理や菜飯、酒を供し、江戸末期には料理茶屋として京都屈指の存在に。明治時代からは格式のある料亭として、宮家や財界人、文人墨客らが集う、歴史の舞台にもなった。旬の食材を生かし、彩り豊かに供される懐石コースの内容は月替わり。京らしい素材づかいや季節感のある演出でもてなす。新春を祝うお献立には、京の正月に欠かせない棒だらや海老芋、甘みを増したかぶらなどが登場する。吸物替わりに、白味噌仕立ての京風のお雑煮がいただけるのも新年ならでは。

また、厚く切った木綿豆腐に、木の芽で香りづけした白味噌を塗って香ばしく焼いた「豆腐田楽」は、十辺舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛（とうかいどうちゅうひざくりげ）』にも描かれた名物料理。昼・夜いずれのコースにも供される。季節ごとに表情を変える中庭に面した「鶴亀松（かくきしょう）の間」はテーブル席のほか、料亭には珍しいカウンター席を備えたモダンな空間。おひとり様でも気軽に利用できると好評だ。初詣に訪れる人々でにぎわう八坂神社のおひざ元、清々しい気持ちに寄り添う美味で良き年の初めを祝いたい。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada