美しい漆塗りの器に盛り付けられて登場したのはディナーコースの前菜のひとつ「フォアグラのデクリネゾン」。生のフォアグラの塩漬けを熟成させて自家製ブリオッシュに載せたフォアグラ・ド・セル、一度テリーヌにしたのち粉状に仕立てたフォアグラのパウダー、自家製パンデピスを添えたフォアグラのポワレ、香ばしく表面に焼き色をつけたフォアグラのブリュレ…と個性豊かな4品が並ぶ。「フォアグラというひとつの素材の可能性をどれだけ引き出せるかをテーマにした一皿です。食感や見た目の楽しさ、サプライズを添えることで、テーブルの会話が弾むように」と微笑む依田英敏シェフ。大阪、神戸の名店で経験を積んだ後、1992年に独立、「レシピ」を開店。

お箸で食べられる和テイストを盛り込んだフレンチがたちまち話題を呼んだ。そのお隣に2000年にオープンした「ルセット」は、シェフの念願であった「白いクロスがまぶしいハレの日のフレンチレストラン」を実現させたもの。地下ながらゆったりとした空間に、時が磨きをかけたつややかな木の調度が落ち着いた雰囲気で迎えてくれる。季節ごとに替わるコースメニューはメインディッシュとデザートが選べるのもうれしい。特別な日に大切な人と訪れたい一軒である。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada