大正10年創業、一本一本に宿る焼き鳥の美学
東京・京橋 伊勢廣 京橋本店
江戸からの姿を残す希少な路地に、左右に軒を分ける形でたたずむ「伊勢廣 京橋本店」。鶏肉専門店の脇に小さなカウンター席を配し創業。「焼鳥の味の要となるのは“塩”なんです。初代の祖父から、その精神を引き継いできました」と語る3代目の社長星野雅信さんと、弟の進哉さん。フレーク状の塩の結晶ゆえに均等にうまみが巡り、少量で素材の個性を引き立ててくれる。初代が考案した「焼鳥フルコース」6,300円は今も変わらぬ人気のメニュー。山葵の効いた滑らかなささみから始まり、フォアグラのごとくとろけるレバー、つなぎなしの歯ごたえのある鶏団子、そして極上の合鴨へと続いていく。寒い冬だからこそ、鴨の上質なお肉で力をもらいたい。薬を使わず、放し飼いにて育った鴨は、コクのある味わいと甘い脂が最大の魅力。
絶妙な火加減で鴨のうまみが引き出され、弾力の強い食感のなかに甘みがじんわりと感じられる。専門市場から仕入れる千住葱、ししとうがさっぱりとしたアクセントになり、好相性だ。コースの後は、丹念にとられた鶏出汁による「特製鶏茶漬け」630円もおすすめ。塩だけで味付けされた、澄んだ味わいは一日の疲れを癒してくれる。すべての美味に、手練れた技と秀逸な塩。そしてお客様への思いやりを宿す。初代から受け継ぐ焼鳥の美学に、今宵酔いしれる。
Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Sayuri Hiratsuka
基本情報
記事更新/ 2011.12.19
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