2006年にオープンした「アルバロンガ」は魚介料理が得意なことで知られるイタリアンレストラン。オーナーシェフの植田憲司さんは、「ピアノ・ピアーノ」「ビランチャ」など、大阪の人気店で経験を積んだ実力派だ。毎朝、市場に赴いて吟味する魚を生かしたメニューには、甘鯛やマナガツオ、フグ、クエ、ノドグロなど旬の高級魚も登場する。毎年、11月の解禁を心待ちにするファンも多いひと皿が、左写真の「セコガニ（ズワイガニの雌蟹）と九条ネギ、フルーツトマトのキタッラ」。「キタッラは、甲殻類やトマトとも相性が良いパスタ。このひと皿にセコガニをほぼ1杯使っています。濃厚な内子の旨み、外子のプチプチとした食感をお楽しみください」と植田シェフ。

ニンニクベースのオイルに2種類のフルーツトマトを入れて軽く煮込み、茹でたセコガニの身と内子、外子を合わせる。そこに茹でた手打ちのキタッラを和えて、九条ネギを加え、余熱でサッと仕上げている。食欲をそそるニンニクの香り。セコガニの身の甘みと凝縮された旨みが麺の1本1本にしっかりと絡む。フルーツトマトの甘酸っぱさや九条ネギの食感がアクセントになって、最後まで飽きさせない。シンプルでいて、深い余韻を残すパスタ。今このシーズンにしか味わえない、珠玉のひと品である。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada