紀尾井町の料亭「福田家」で修業した岡元信さんが2004年に開店し、独創的な日本料理で人気を博している西麻布「ラ・ボンバンス」。その姉妹店として2014年にオープンしたのが、「すだち（Sudachi）」だ。店内に入ってまず目を引くのは、広々としたカウンター席。キッチンとカウンターの高さがほぼ同じに設計されており、調理シーンをあますところなく見ることができる。既成概念にとらわれない日本料理の数々は「ラ・ボンバンス」と共通しているが、「すだち」の特徴は、より食材の「素」を生かしていること。賀茂ナスを使った「茄子のオランダ煮とフォアグラのソテー」は、素材の魅力と遊び心を堪能できる同店らしい料理だ。揚げナスを醤油やみりん、出汁で炊いた「オランダ煮」に、フォアグラのソテーを合わせたもので、身がしっかりとした賀茂ナスと、濃厚なフォアグラの風味と脂が好相性。

まろやかな木の芽のソースが全体の味をまとめ上げ、ジャガイモのチップス、ラディッシュが見た目にも食感にも変化をつけてくれる。岡元さんは、店のコンセプトを、「たとえるなら、遊園地でジェットコースターに乗った後は歌舞伎を見られて、その次はテーマパークのアトラクションが待っている――。そんな夢のようなレストラン」と話す。その言葉通り、昼2種類、夜1種類のコースには握り寿司や鉄板焼きも織り込まれており、メニューを見ているだけでも期待が膨らむ。大切な人を誘って、ここにしかない楽しい食を求め、出かけたくなる店だ。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa