「誰もが食べたことのある『とんかつ』を、どこまでおいしくできるのか挑戦してみたかったんです」。西麻布にあるとんかつ専門店「豚組」の大石智料理長はこう話す。ここで食べられるのは、北海道から沖縄、イベリコ豚まで、味わいに徹底的にこだわり、各地から集めた豚肉で作ったとんかつだ。メニューにはロース、ヒレ、とくに脂身が多くジューシーなリブロース「デ・リュック」の3種類に分けられて銘柄豚の名前が並ぶ。また、「さっぱり系」「濃厚系」など、味のタイプが記されているのも特徴だ。「豚の種類や部位によって、味わいはまったく異なるんですよ。何人かでご来店された場合、違うものをオーダーして交換するとはっきり感じていただけると思います」と大石さん。

とんかつはいずれも火を通し過ぎない揚げ加減で、肉本来の味わいを引き出しており、その個性をはっきりと感じることができる。また、「豚組」のとんかつはその味に加え、軽やかで食後も胃もたれしないことでも評判を呼んでいる。秘訣は、「太白ごま油」をベースに植物性油をブレンドした揚げ油と、長期熟成した特別なパン粉だ。さっくりと揚げられた肉の味をシンプルに楽しむため、最初は何もつけずに、次に塩、最後にソースでいただくという流れをおすすめしている「豚組」。たびたび入れ替わる銘柄豚の新たな個性と美味に出合うため、何度も訪れたくなる店だ。

Photo/ Kohei Nakamoto
Text/ Ryoko Nakagawa