名古屋のビジネス街で、明治3年から時を重ねる老舗割烹料亭。接待や商談などに利用されることが多いこちらは、店名どおり、鯛に強いこだわりを持つ。主に使用しているのは、外海である尾鷲（おわせ）湾の荒波に揉まれた4.5kg以上ある天然真鯛。刺身をはじめ、焼く・蒸す・煮るといった素材を生かした調理法で提供するが、数ある鯛料理のなかでも、一際目を引くのがこの「鯛めし」。丁寧にほぐした鯛の身を一晩水に晒し、湯煎で乾煎りして仕上げた鯛そぼろを、昆布だしと醤油で炊いたご飯の上に敷き詰めたものだ。繊維状になった身にたまりやみりんの風味が染み込んだそぼろは優しい甘さで、粉雪のようにふんわりした食感。

ランチではお重にたっぷりと詰め、吸い物、漬物とともに出される。夜は鯛を中心に、旬の魚介や野菜を使用した料理から選ぶアラカルトがおすすめ。みりんとたまりだけで作る煮魚は、贅沢に使用する良質な調味料の旨みを魚にまとわせた人気の一品だ。鯛の多彩な風味や食感が楽しめる料理の数々は、「鯛めし楼」ならでは。旬を味わい尽くす至福の時間を過ごしてみては。

Photo/ Hiroshi Mamiya
Text/ Yuko Morishita