ミシュラン3つ星に輝く 「銀座 小十」の店主・奥田透さんがプロデュースする「銀座 奥田」。昼、夜いずれもおまかせのコースで「締め」に出されているのが、旬の食材をふんだんに使った炊き込みご飯だ。「おいしいことはもちろん、記憶に残る料理を」という奥田さんの信念は、炊き込みご飯にも反映されている。たとえば、松茸とかますを使った秋の炊き込みご飯は、土鍋のふたを開けた瞬間、大ぶりの素材が目に飛び込んでくる。ひと口食べれば、松茸と炭火で焼かれた香ばしいかますの風味と食感がしっかりと感じられる。それら旬のおいしさをしっかりと支え、まとめ上げるのが、土鍋でふっくらと炊かれた魚沼産コシヒカリだ。

細かく刻んだ松茸を出汁で煮出し、その煮汁で炊いたご飯も強い香りが広がり、余韻を残す。また、炊き上がりを客席で土鍋のふたを開けて見せ、その後、厨房で取り分けて運ぶ心遣いもうれしいもの。名店ならではの技ともてなしで、季節の口福を五感で楽しめる逸品だ。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa