加えるのではなく、素材の良さを引き出す料理を
京都・木屋町 日本料理 とくを
土鍋のふたを開けると、鼻孔をくすぐる香ばしい鯛の香り。大きな尾頭が丸ごとひとつ、お米と一緒に炊き込まれている。これが、京都・木屋町「とくを」名物「鯛めし」のおいしさの秘密だ。仕入れるのは、淡路島または愛媛産の真鯛で、「旨みが一番詰まった頭を使うのはもちろん、じっくり炭火であぶってから炊くと、香りがぐんと立ちます」とご主人の徳尾真次さん。さらに、カツオと昆布の出汁を加えることで、コクのある「鯛出汁」が生まれるという。それを余すところなく吸うお米は、モチモチとして甘みがある富山産のコシヒカリだ。ひと口いただくと、鯛の身は肉厚でふっくら。旨みが凝縮されたご飯は、弾力感が残る絶妙な炊き上がり。噛むほどにおいしさが広がり、まさに至福の味わいである。
料亭「たん熊北店」や祇園の割烹などを経て、2005年に開店。夜はコースに加え、日替わりで約50種もの一品料理を供する。注文ごとに、瞬時に繰り出される多彩な技。そこに息づくのは、鯛めし同様に「加えるのではなく、素材の良さを引き出す料理を」という割烹の矜持。ぜひその滋味を堪能したい。
Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Noriko Yamaguchi
基本情報
記事更新/ 2013.10.18
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