「資生堂パーラー銀座本店」のスペシャリテとして長年人気を博すカレーには、納得の理由があった。食材が高価なだけではない。テーブル脇でぱっとあがるフランベの炎や、専属のウェイターがついたかのようなうやうやしいサービスに、非日常の優雅な気分に浸れる。この特別感こそが、カレーを、記念日のごちそうにもなるような高級メニューに押し上げている所以。「伊勢海老とアワビのスペシャルカレーライス」は、2001年に新装を終えた東京銀座資生堂ビルの誕生を記念して生まれた。当時話題をさらったこのひと品は、多い時にはひと月に100食以上もの注文があるという。伊勢海老をまるごと１匹、鮑もまるごと１個がひとり分。

これをウェイターが目の前のワゴン上でフランベし、にんじん、ポテト、ライスとともに盛り、サーブしてくれる。ソースは、３日がかりで作る「資生堂パーラー」のオリジナルカレーに、伊勢海老のみそを混ぜた贅沢な味わい。カレーという概念を超え、伊勢海老、鮑、ライスを高級ソースで食べるというフレンチの感覚──由緒正しい西洋料理店だからこその、サービス精神と遊び心があふれるひと品だ。

Photo/ Akihiro Maekawa
Text/ Noriko Yokota