大胆な素材使いと独自の料理法で人気を呼ぶ「御田町 桃の木」。オーナーシェフの小林武志さんが目指す“体にいい中国料理”は、契約農家などから旬の野菜を取り寄せて、生み出されている。小林シェフの創意工夫が随所に光るなかでも、とりわけ評判が高いのは、「豆板醤を使わない麻婆豆腐」。湖南省から特別に仕入れた唐辛子を砕いたものを使って辛さを引き出し、スープは最小限の量にすることで豆腐を固めに仕上げる。「湖南省の唐辛子は肉厚で甘みもあり、シャープな辛さが生まれます」と、小林シェフ。しょうゆだれで煮込んだ牛の角切り肉がさらに個性を加え、うまみと香りが凝縮された希有な味と出会える。ミシュラン一つ星（2010年版）にも輝く話題店は、連日満席。

「和食、フレンチと同じ土俵で勝負できる料理を出す」というシェフの意気込みはすでに認められているところ。ワインへのこだわりも強く、ワインとのマリアージュで、中国料理の奥深さを伝えてくれる。

Photo/ Kohei Nakamoto
Text/ HEARST FUJINGAHO