実直な手法で素材の持ち味を引き出す
東京・銀座 銀座 よし澤
階段を下りると、飛び石が白木の引き戸へと導く。玄関横には蹲(つくばい)も備えてあり、和の雰囲気にあふれている。白木がすがすがしい店内には、数寄屋風の個室が2部屋と、店主の吉澤定久さんが腕を振るう、木曽檜の一枚板を使ったカウンター席がある。「ぎんざ 一二岐」で知られる吉澤さんが、自らの名を冠したこの店を開いたのは、2014年。手をかけた正統な和食は「一二岐」と変わらない。「ただ、こちらでは思い切り、使いたい素材を使っています」と吉澤さん。くえ、のどぐろなど、ときには高級食材も盛り込み、季節を五感で楽しめるひと皿に仕上げている。「一二岐」では、「かつおの藁(わら)焼き」が名物だが、こちらでは、「さわらの藁焼き」が楽しめる。
藁に包み、皮目をパリッと、身にはなるべく火を通さないようさわらに熱を入れる。ほんのりとした温かみにとろける脂と身の旨みは、至福の味わいで、さわらの新しい魅力を教えてくれる。セイコガニの内子・外子を贅沢に使った椀は、かにしんじょうに大根を重ねてあり、そこから梅の形のにんじんと木の芽が透ける。氷の下に春の足音を感じるといった趣向で、この季節を見事に表現。料理から空間まで、吉澤さんの美意識ともてなしの心が感じられる店は、ミシュラン一つ星(2017年版)に輝いている。
Photo/ Yuko Uehara
Text/ Ryoko Nakagawa
基本情報
掲載日/ 2017.2.20
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