目利きが選んだ黒毛和牛のとろける柔らかさ
東京・人形町 人形町 今半 本店
明治28年(1895年)に創業した牛鍋屋「今半」。その日本橋支店として、昭和27年(1952年)、水天宮ほど近くに開業したのが「人形町 今半」だ。もとは寄席であった数寄屋造りの趣ある建物は、1階は鉄板焼きの「喜扇亭」、2階が昔ながらのすき焼きを食べられる座敷席となっている。長く愛され続けるすき焼きは、とろけるような肉と、甘めの割下が絡み合う至福の味わい。牛肉はあえて産地や銘柄にこだわらず、熟練の目利きが日本全国から、黒毛和牛の雌牛のみを仕入れている。選定で重視しているのは、生産者の愛情や飼料などの環境と、融点の低いなめらかな脂肪。これがすき焼きにしたときの食感の決め手になる。割下の材料は、醤油、みりん、砂糖、酒のみとシンプル。
絶妙な配合や沸騰させるタイミング、そして2日間寝かせることで、いつの時代も変わらないまろやかな味わいに仕上げている。また、厳選した素材をすき焼きとして楽しむために欠かせないのが、焼くように炊く、「今半」流の調理法。客席では、訓練なしには難しいこの方法により、仲居が肉と脂の旨みを最大限に引き出してくれる。同店で、すき焼きに次ぐ名物料理となっているのが、アラカルトの「ローストビーフ握り寿司」だ。特製のローストビーフを、寿司仕立てにしたもので、やわらかさと肉の旨みがストレートに感じられるひと皿となっている。また、コース料理で供される、四季折々の会席料理を楽しみに訪れる人も多い。例えば、晩秋の前菜には、柿のなますや雪の結晶のような形に切った「雪れんこん」、鱈の白子豆腐、素材の持ち味を素直に引き出した料理が並び、色合いも美しい。受け継がれた名物料理ともてなし、より抜いた素材、旬の料理が揃う店として、今も美味を求める人々でにぎわい続けている。
Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa
記事更新/ 2015.11.18
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