女将・柴辻味左代さんの祖父の代に祇園にて創業。昭和20年に西陣に移転してきた鳥料理専門店。もともとは鳥のすき焼きがメインであったそうだが、現在の看板メニューは「鳥の水だき」。敷地内に湧く清涼な井戸水を使い、鶏ガラ25キロから30キロを5～6時間かけて煮込んだスープがベースになる。「途中で何回も水を足してしつこい脂を取るのがコツですね」と女将さん。鶏は、鮮度が高い朝締めの山陰の地鶏を使用。テーブルについて、付き出しをいただいていると、スープであらかじめ炊いた鶏が包金製の鍋で運ばれてくる。まず、スープを味わい、ほろりとやわらかい肉を味わう。野菜を足してさらに煮込むと甘みが加わり、滋味豊かな味わいに。自家製ポン酢のほどよい酸味も爽やかで箸が進む。

店はにぎやかな通りから一本入った静かな場所にある。座敷にクツクツと鍋が煮える音だけが響き、中庭には四季折々の風情が漂う。京都ならではのしっとりとした雰囲気のなか、身も心もやさしく満たされていくのが実感できる一軒。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada