1985年にオープンした「オテル・ドゥ・ミクニ」。そのオーナーシェフは、日本のフランス料理界を代表する、三國清三氏だ。素材そのものの力をいかした「キュイジーヌ・ナチュレル」で知られる三國氏だが、根底にあるのは、「革新と創造」だという。「フランス料理は本来、自由なもの。半面、常に新しいことに挑戦し続けなければ、フレンチとは言えないのです」と、三國氏は話す。

その挑戦と進化の歴史は、同店の開店30周年記念特別メニュー「30年間の蓄積」にもあらわれている。例えば「三種ピーマンの東京ハチミツのやわらか煮、その赤ピーマンのババロア添え」は、1986年の三國氏の著書『皿の上に、僕がある。』にも登場して一番人気だったメニューを、東京産のハチミツを使い、ブラッシュアップしたもの。日本料理の技法を大胆に取り入れた「国産本鮪の“づけ”とキャビア合え、オニオンの三角切り添え」は、三國シェフらしいエスプリが感じられる、2014年に発表したメニューだ。「最近は、素材の特徴はもちろん、生産者と向き合う時間のなかで感じたインスピレーションを大切にしています」という三國氏。オープンから30年、たゆまぬ歩みが、多くの美食家をうならせ、リピーターを生んでいる。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa