下町の風情を残す白金高輪・四の橋商店街。その入り口で、毎晩多くの人でにぎわいを見せるのが、伝統的なシチリア料理をメインにした「ロッツォシチリア」だ。マネージャーの阿部努さんは、シチリア料理の特徴を「頭で考えるのではなく、反射的に『うまい！』と思える、食材を中心においたシンプルな料理です。その分、火の入れ方や味付けに繊細さが必要です」と語る。そんなスタイルを存分に感じられるのが、ペコリーノチーズを使ったフリットだ。レシピは実にシンプルで、シェフの中村嘉倫さんと阿部さんが選び抜いたシチリア産のペコリーノチーズに小麦粉とパン粉をつけ、揚げるというもの。

きつね色の衣が目にも舌にも香ばしいフリットは、サクッとしたパン粉の歯ざわりの後、とろりととけるペコリーノチーズ特有の濃厚な香りとむっちりとした食感を、ストレートかつ存分に楽しめる一皿となっている。常時100種類が揃うシチリア産ワインや、現地のリストランテを思わせる店内の活気とともに、その風土に想いを馳せながら味わいたい。

Photo/ Akinori Maekawa
Text/ Ryoko Nakagawa