むっちりと弾力に富んだニョッキに添えられるのは、みずみずしい緑のアスパラガス。そのシャキシャキとここちよい歯ざわりと噛むほどに口の中に広がる甘みが春の訪れを実感させてくれる。「グリーンアスパラガスは皮もおいしい素材です。青っぽい風味と食感をしっかり味わっていただきたいので」と山根大助シェフ。水分をほとんど足さず、少量のオイルとバターで煎りつけるように高温で蒸し焼きにすることでアスパラガスの個性がぼやけないよう工夫を凝らす。ニョッキに選んだジャガイモは「インカのめざめ」。こちらも蒸すことで、うまみともちもちとした食感を引き出している。素材の個性を見極めた「最適調理」を旨とするシェフの一皿はシンプルでありながら、実に奥が深い。

今いちばん勢いのある旬の食材を、最もおいしい状態で楽しんでほしいという熱い思いがお皿の上から伝わってくる。イタリア仕込みの技と日本人ならではの繊細な仕事を重ねて生み出す「ポンテベッキオ」の料理。季節の味覚をちりばめたイタリアンはうれしいサプライズに満ちあふれている。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Sawako Yamada