阪急電鉄、宝塚歌劇団等の創始者として知られる、逸翁こと小林一三氏。大阪・池田にある旧邸は「逸翁美術館」として親しまれたのち、2010年の移転を期に「小林一三記念館」として生まれ変わった。同館の敷地内にあるレストラン「雅俗山荘」は小林氏が過ごした洋館を生かしたクラシカルな佇まい。前田修平総料理長が監修、古舞伸矢料理長が手がける料理も、空間にふさわしいクラシカル・モダンを旨とした洗練された品々だ。伝統的なフランス料理に新しい食材や手法を取り入れ、変化をつけたメニューは季節感を大切にしている。夜のコースの肉料理「仔牛の背肉のロティ」は塊で焼いたブルターニュ産のやわらかな仔牛肉を切り分けて提供。

リードヴォー（仔牛の胸腺）を動物性の脂と相性の良いアーティチョークの野生種・カルドンと煮込んで添える。春夏が旬のモリーユ茸とフォンドヴォーのソースで仕上げた、軽やかさの中にも深みのあるひと皿だ。ハマグリとホワイトアスパラガスをカルボナーラソースで味わうオードブルは卵のパルフェが濃厚でいてやさしい。四季折々に表情を変える庭は新緑の季節はとくに清々しい。しっとりとしたたそがれ時の佇まいは昼とはまた違った風情がある。ディナータイムは17時から。17時にディナーの予約を入れて1～2時間前に訪れ、記念館を見学。庭園をゆっくりと散策してから食事を……という楽しみ方もおすすめしたい。

Photo/ Katsuo Takashima
Text/ Sawako Yamada