この店のなりたちを聞くと心がほんわかと温かくなる。専業主婦だった杉本雪枝さんがご主人の勧めで店をスタートさせたのは1992年のこと。姑から受け継いだ京のおばんざいをメインに据え、BGMにジャズが流れる店のスタイルは会社員だったご主人の「あこがれの店」を形にしたものだという。おばんざいは定番10種に季節のものが2～3種。「おばんざいは常のおかず。ふだんづかいしてもらえるように」とひと品が400～550円という価格もうれしい。揚げた茄子をニシンを煮たダシで炊く「ニシンと茄子の炊いたん」はふたつ割りにして食感をしっかり残した茄子とほくっとやわらかなニシンのバランスが良く、お酒の肴にもご飯のお供にもおすすめ。

「おひとり様でも少しずついろいろ楽しんでいただけるように」とおばんざいの盛り合わせにも対応してくれる。カウンターに立つ次女の瑠衣子さんら、ご家族を中心に営む店ならではの居心地の良さに足しげく通う常連も多い。

Photo/ Satoshi Yasukouchi
Text/ Sawako Yamada