折り目正しく、端正な京料理が味わえる「二條ふじ田」は、地元の人々から愛される割烹店。水にこだわる店主・藤田敏晴さんらしく、厨房には井戸が掘られ、その清らかな水を使って、夏には鱧や鮎、冬には蟹やかぶらなど、グルメの心をぴたっと射抜くような魅力的なコース料理が供される。コースの締めに出されるのが、小さな丼に入ったちらし寿司。寿司割烹の名店、祇園「蘭」で修業した藤田さんの技が詰まっており、海鮮ちらしとばらちらしを合わせた贅沢な内容だ。鯛やいかの下には、しっかりかつ上品に味付けされたばらちらし。椎茸煮、細かくほぐされた穴子、白身のおぼろが酢飯を甘辛く仕上げてなんともおいしい。もちろん、もみ海苔や京都らしい極細の錦糸卵もたっぷりと載せられている。

藤田さんは上生菓子の老舗「二條若狭屋」に生まれ、京都洛中で育った生粋の京都人。食後に出される和菓子とお薄にも、器の目利きにも、京都らしい美意識があふれ、随所で静かな感動を与えてくれる。

Photo/ Koichi Higashiya
Text/ Noriko Yokota